目次

・コストカット時代の家賃という高コスト。

・高い家賃への嫌悪?

・不動産業界のAMAZON? インド発 OYOLIFE

・月額4万円で全国住み放題 ADDRESS

・異世代ホームシェア

・まとめ(新しいホームレス、実家ぐらし、ルームシェア、ホームエクスチェンジなど)

現代社会の先進国は成熟社会が殆どで、物余りがそれらの社会の特徴だと言える。

そんな社会においては必然的に資源を増やすよりもコストカットを行ってゆく方が効率的なパフォーマンスでキャッシュが増やせるはずで、それゆえに財政再建、経費削減、コストカットという言葉が行政、ビジネスにおいては叫ばれ、日常生活においてはなるべくものを捨て、最低限のもので生きようとする断捨離やミニマリストなどという言葉が広く定着してきた感がある。

彼らのように不要なものを捨て必要最低限のもので生活をする人たちとはいわば時代の申し子であり、カルロス・ゴーン社長が何故倒産寸前の日産をV字回復させ建て直す事が出来たのか、あるいは橋下徹氏による大阪府知事就任以来の行政改革による財政再建の成功も、単純に言えば切って切っての大削減をしていったから、というのである程度は説明がついてしまう。(参考資料 https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201811200000157.htmlhttps://news.yahoo.co.jp/byline/ueyamashinichi/20190111-00110793/http://www.pref.osaka.lg.jp/zaisei/joukyou/04hutsuu.html

そのような大財政削減時代とも呼べる今を生きる我々にとって、なぜ人々は家賃というコストに切り込みを入れないのか、という事は当然行き着く疑問であろう。

なぜ、敷金礼金や重くのしかかる初期費用などにこれまで価格破壊が起きてこなかったのか?この事はもう少し考えてみる必要がある。

たしかに、家賃というものは、勿論高いものから安いものまで選択権というものがあり、選ぼうと思えば質は良くないとしても安い物件を選べる。しかし、全体として日本社会の家賃というものはバブルの崩壊以降も変わらず下落をしていない、と言われているようだ。確かに他の人々と同じようなクオリティーの自宅に住もうと思えば、未だに大卒初任給(約20万円)の3分の1程度は家賃に持っていかれるだろう。

日本社会の家賃が下落をしていない、という事に関してプロブロガーのイケダハヤト氏(通称イケハヤ)が平山洋介『住宅政策のどこが問題か』 (光文社新書)の文書を引用してこのように要約している。

なるほど。昔は今よりも「低質だけど低家賃」の木造住宅が多かった、というわけですね。今ではそういう物件は取り壊されて、より収益性の高い「高品質・高家賃」の物件が多く建てられるようになっていると。

http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/24824


イケハヤ氏がいうように、供給サイドが低家賃住宅だと儲からないから高家賃物件ばかりにしてきているとすれば、「住」にはやはり価格破壊の起こらないある種の硬直性が依然としてあるようだが、しかしそのような供給サイドの事情を黙認してきた人々のマインドの存在も無視するべきではないだろう。

家賃への反発。どうすれば家賃は下がる?

我々現代人はなぜか手元に残る感触もなく、それほど掛けている金額に比べて満足度の低い家賃というものに多くの支出を余儀なくされるのか。

「草食系」とか「さとり世代」とか今の人は欲しがらない、という事もよく言われてきたが、今の若者がもし分相応のところで満足出来るのであれば「家というただ寝るだけところに7万も8万も毎月掛けたくない」と思う人もかなりいるのではないだろうか。(実際この掲示板まとめを見てもそのように思う人は結構いそうだし、何を隠そう僕自身がずっとそうだった)

思考ちゃんねる「家賃とかいう人生最大の敵」”http://mindhack2ch.com/article/464990451.html

たしかに、世界的に見ても先進国の首都圏においては何も日本の東京だけがこれほどまでに家賃が高いというわけでもない。

ニューヨークやサンフランシスコ、ロンドンや香港にシンガポールなど、依然変わらずに人間が住居に毎月の収入の多くを支払う事を世界的に余儀なくされている。

⇒「2ベッドルームの部屋を借りるのに世界で最も高い24都市」
https://www.businessinsider.com/most-expensive-cities-around-the-world-to-rent-a-2-bedroom-apartment-2017-5#9-dublin-ireland-2048-16

よって、現状このような居住に人がお金を支払う構図は日本だけではないのだから、いま日本の不動産業界に対し「あぐらをかいている!企業努力をしろ」などと言っても当人たちからすれば流れ弾でも当たったような気分かもしれない。

しかし、最近では上記した「家賃という人生最大の敵」というまとめ記事の人々のように、高い家賃に対して世界的にもどんどんと人々が嫌気をさしてきて、従来の賃貸方法ではないその他の道を模索し始めているような兆しが見えるのである。

例えば「世界一家賃が高い」と言われる香港においては、若者は違法でも通常の半値で住める工業用のビル居住を始めていると言う。

「世界一高い家賃に嫌気、香港の若者は「違法」でも工業用ビルに居住」“https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-27/PE3LYP6KLVR701

このように、これまで当たり前だった居住スタイルである「賃貸」という選択肢以外のものを人々が選択する事によって、不動産の供給側である企業が努力を余儀なくされ、家賃賃料の価格破壊が起こってゆくはずである。

香港ほどに限られたスペースで生活を余儀なくされているわけではない日本において工業用のビル居住が若者に広まるとも思えないが、昨今日本社会にも従来にはなかった他の居住の形が提示され始めている。

そこで今回は近年現れたばかりの話題の新サービス「OYO LIFE」「ADDRESS」そして「異世代ホームシェア」の簡単な概要と料金的な側面を紹介していきたい。

また、番外編としてホテル暮らし、あるいはAirBnb暮らしというものも、一体どれ程毎月掛かるのか、という事も紹介してみたい。

OYO LIFE

「旅するように暮らそう」がキャッチコピーのOYO LIFEはインド初のベンチャーによって始められた手軽に住んで手軽に引越せる革新的サービスである。なんでも不動産界のAmazonとまで言われているそうで、その響きを一言で言うならば圧倒的な黒船感だと言える。

その内容はと言うと「敷金、礼金、前家賃などの初期費用が無用」「不動産仲介会社などでの面倒な手続きや内見不要」「家具などは一式物件に備え付けられている」というもの。

これは素晴らしい!数ヶ月前に初めて聞いた時は思わずそう膝を打ってしまった。

しかし

「えっ?それってこれまでの出張なんかで使ってたマンスリーマンションとかウィークリーマンションってやつと同じじゃない?」

ふと一瞬間考えてそのように思ったのであった。

うん、確かに一緒なのかもしれない😊😊😊

しかし「だからなんだ!!!」という話である。

結局ウィークリーマンションなどがあまり社会に定着していない感のある中で、それよりも全体のシステム利用が便利で使い勝手が良さそうなイメージを引っさげてきたのである。

あるいは、社会での普及タイミングがベストな時期に参入してきたのだ、ということである。

実際、従来のウィークリー・マンスリーマンションなどよりもこのOYO LIFE、より手続きが簡単で、ネットで簡単に入居・退出の手続きが完結するようである。

また、OYO LIFEの事業の加速度は凄まじく、ホテル事業の拡大も目覚ましいという事で、今後よりこのサービスを利用する事によってその他の新しい利用価値が増えてくる可能性も十分にありえる。

https://mofmof-investor.com/oyo-life-japan-3666.html#i-2

入居期間は1ヶ月から可能だという。

確かに、その点に関して言えば従来の1週間からOKなウィークリーマンションなどの方が柔軟な使い方が出来るとも言える。

しかしこのOYO LIFEの真骨頂はやはり手続きの簡略性にあると言えるだろう。クレジットカード登録さえすれば最短30分で入居の手続きが完了してしまうというのだから、これは恐るべきお手軽さであり、ざっとホームページを見た限り魅力的な物件も多いのがなんとも素晴らしい。

ただし初期費用・家具の購入費用などが掛からないぶん、部屋の値段がどれも少々お高く感じる。というのも、ざっと見た感じ大体毎月の支払いが10万円前後は最低支払う必要がありそうな感じなのである。

トータルでみればこれまでの賃貸よりはお得かもしれず、また居住の移動が簡単に出来る点では間違いなく素晴らしいサービスだが、コストの点においては現状まだそれほど割安感を感じられないとも言えるだろう。

いずれにせよ、今後の動向に注目をしたいサービスであるのは間違いない。

OYO LIFE https://www.oyolife.co.jp/

ADDRESS

さて、2つめの紹介は月4万円(毎月契約の場合月5万円)で日本全国住み放題の新サービス。

その名も「ADDRESS」。

これはすごい。

「ちょっと奥さん聞いて〜」と待ち行く人みんなに教えたくなるようなサービスだ。

「食べ放題」「飲み放題」「パケ放題」などなど、いちいち意識を使わなければ行けない単品注文に比べ、我々は〜放題というおまとめパックが大好きである。

その点、この「ADDRESS」はまさに我々の弱いところをついてきた革新的サービスだと言えよう。

この「ADDRESS」、これまでは東京を始めとした首都圏や大都市に入居の拠点が少なく、どこかのどかな地域の古民家風物件ばかりだった為、仕事の通勤先が都心の人や都市生活が好みの人にはマッチしないサービスであった。

それも仕方がない。だってまだ始まったばかりのサービスだもの……。

などと言っている間にどうやら都心の品川区と渋谷区にも2019年の4月から物件がニューオープンする、という予定があったようである。⇒ https://jp.techcrunch.com/2019/02/18/address-11-area/(2019年5月現在ADDRESSのホームページにはそれらの拠点の記載はない。

しかしそのような予定があったという事は近い将来にこのような拠点が増えていくはずであり、この勢いでいけば、ADDRESSは大都市で生活をせねばならない人々にも利用の検討をされ始める可能性が大いにあるだろう)

ただし最初から完璧なものなどない。この革新的サービスにもいくつかの問題点は当然見つかるのだ。

その一つは1拠点に対して7日間の予約までしかとれない事で、それ以降は再度の予約が必要になることである。

もしもADDRESSだけでの生活者はその場合次のADDRESS物件に移動しなければならないが、隣駅などの近場に他の拠点がなく、そのばあい県をまたいだ移動コストが毎回掛かってしまう事が考えられるのであり(千葉から群馬ならまだいい方だが、千葉から翌週は福井の物件しか空きがない、となったら関東から離れたくない場合は大変な事態である……)、何より考えなければいけない問題が、空き物件が7日毎に毎回確保出来る確証もなく、次の部屋が確保出来るまで自宅難民になってしまう可能性が考えられる事だ。

その他に考えられる問題としては、現状では空間の生活もきっとバックパッカー的な人たちがこれまでホステルやルームシェアでしてきたあのようなものになる可能性が高く、きっと共同スペースのリビングでは真性リア充と呼べる人たちが自然とグループを作って楽しそうに会話に花を咲かせているのであり、いろいろな人との日々関わる事が苦手な人たちにとっては非常に厳しい空間である可能性が高いという事だ。

もっともこのADDRESSというサービスは出会いも一つのテーマにしているため、これは基本的にはメリットの側面であり、この点は人によってメリットとなりまたデメリットともなりうる点であろうが、そのような事が苦手な人にはこのサービスは利用が難しいかもしれない。

また、必然的に風呂やトイレ、あるいは洗濯などを他の人々と共有する必要があり、大勢の人との共有というこの点に抵抗を覚える人もいるのではないだろうか。

その点も、今後色々考えながら改善がなされていくポイントかもわからないが、いずれせよこのサービスの可能性が高いのは間違いなく、今後このサービスが拡大して世界規模になってくれれば、まさに世界を旅しながら暮らす、というのも圧倒的コスパで可能になる可能性があるだろう。

これまた大注目のサービスだと言える。

ADDress https://address.love/

異世代ホームシェアリング

さて、異世代ホームシェアという試みも当然これまでの賃貸暮らしより安く住めるものである。

基本的にはシニア側から特別要求をされる以外に初期費用はかからないし、毎月の費用は大まかな目安として電気・水道・光熱費代などを考えて毎月2〜3万円程を支払う、という形が一般的なケースになるとみられる

その点に関しては個別のケースを増やしながら、基本的なスタイルを今後確立して行きたいと考えているが、コストの面に関して言えば借り手である現役世代の人々にとっては、異世代ホームシェアはもっとも魅力的だと言えるのではないだろうか。

また、貸し手であるシニアと借り手である若者の同意が出来れば、一応は1ヶ月などの短期契約なども可能だと考える。

しかしシニアとの人間関係が醍醐味である異世代ホームシェアにおいては上記のような他のサービスほどポンポンと入れ代わり立ち代わりが簡単に繰り返せるか、といえばそのように簡単ではなく、旅するように住む、というような移動性の面では他のサービスに比べ高いアドバンテージがあるとは言えないだろう。

また、OYO LIFEなどと比較した時、異世代ホームシェアもADDRESS同様、全く一人での生活を望む人にとっては厳しいものなのは間違いない。

しかし異世代ホームシェアにおいても、出会いないし交流の点が大きな醍醐味であり、そのように他者との生活に不安を覚える人こそ、ぜひ積極的に参加をして、自身の人生を豊かにするワンステップを踏んでほしいものである。

また、勿論学生とオーナー側のメリットは異なるものが多いが、互いに都会の中で濃い関係性の同居人がいることで様々な点において安心感を感じられるだろうし、学生側に限って言えばその経験はその後の就活などにおいて評価がされるものになるかもしれない。

特に社会貢献を目的とする企業やNPOをはじめとするソーシャルワークの団体などにおいてはそのような経験は大いに評価されるのではないだろうか。

と、異世代ホームシェアのサービスに関しては語ると長くなるので、より詳しいメリット等に関しては他の記事を参照してほしい。

「異世代ホームシェアとは?」⇒ https://isedai.com/intergenerational-homeshare/
「異世代ホームシェアにおける現状考えられる問題点」⇒ https://isedai.com/intergenerational-homeshare-problems/

最後に付け加えていうと、OYO LIFEがマンスリーマンションの発想に近いサービスだとしたら、異世代ホームシェアの取り組みも従来の留学などで行われていたホームステイのテーマを国内へ転換したものだ、と言えるだろう。

しかしこれは裏を返せば、今後サービスの拡大次第では全国では当たり前になり、また従来の異なる国へのホームステイも、本サービスによりもっと安価にそして簡単な手続きで行えるようになる可能があるのではないか、と考えている次第である。

まとめ

従来の賃貸、という発想の他に考えられるはその他にも、新しいホームレス、実家ぐらし、ルームシェア、そしてホテル暮らしあるいはAirBnb暮らしがある。⇒「ホテル暮らし&AirBnbで暮らすといくら位かかるの?」(現在作成中)

これらの事についてもまた他の記事でより述べてみたいと思うが、ざっくり言うと、今ならSNSを通じて信用させあれば毎日知り合いやフォロワーさんの家を渡り歩く事も出来るし、この経済状況の中で「一体実家ぐらしのどこがいけないのか」という風にこれまで周りからあまり好意的に受け入れられなかった(?)実家ぐらしも結局毎月貯蓄をする為にはそれは仕方がない、という風な感覚になってくる可能性もあるだろう。

ルームシェアやAirBnb生活など、ほかにも多様な生活スタイルを一人ひとりがどんどん活発にして選択肢を増やす事で、これまで毎月の収入をかなり奪われていた賃貸生活一択、という固定的な点がかなり改善されていくのではないか。

また、旅するように暮らす、という点においては、もしあなたが貸し出せる居住スペースを持っている場合、自分の自宅とほかの人の自宅を一定期間交換するHome Exchangeサービスも面白い。

https://www.homeexchange.com/holiday-home/1474590

これによって世界中どこでも住む事が可能だが、しかし相手あってのサービスな為、こちら側だけの希望が通せずに、どれくらいの期間その場所に住むかどうかの自由度の問題、それからこちらの自宅の質によっては自分が希望する相手に交換を断られてしまう可能性の問題などがあるだろう。

いずれにせよ、今後はホテル暮らしやより手軽な形の”住み方”がより安価な形で社会に提案されていき、賃貸住宅も価格競争に巻き込まれるかもしれないし、テクノロジーの力でアプリなどを通して顧客と売り手はどんどん直接つながっていき、殆どの賃貸仲介業者はその生存が危ぶまれるようになるのかもしれない。